あらかわひょうぐてんともうします

暮らしをがらっと変化させて

千葉市 中央区 S邸

ご依頼者は弊社と長い間お取引下さっていたお客様のご子息様でいらっしゃいました

家族の新盆を執り行うのに家屋を綺麗にしたいということでした
お話を伺ったときは少しショックでしたが
私も若輩者ながら荒川表具店四代目
こういった辛いお話をお聞きしなければならない事もたまにあるのは事実でした

華道の師範であられた先代様がご健在の頃からのお付き合いですので
本工事の施主様となられるご子息様の満足を得られる努力をしなければと
綿密に話し合いながら仕事を進めさせていただきました

着工
基本的には暮らしやすく使い勝手良くということがテーマでした
それからできれば風水によるカラーリングを取り入れること
家紋に入れられた梅柄を取り入れられたらベターであること
本件では来客用としてまた今後を考えてトイレの設備はできるだけ良くするといったところが話し合いに浮かびました

大きな変更点のひとつとして
写真の洋間に見える茶だんすの置かれてある部屋の境の壁を取り払い
ドアを含めた開口部の位置を変更することで居間を広くリファインしました
それから天井などに貼られたジプトンなどの石綿素材を処理するということから下地をつくりクロスを貼ることにしました

廊下のフローリング床は何らかの原因で傷みが出てぶかぶかした箇所があったことから
施主様のご要望でもっと耐久性のある素材はないだろうかと相談されました
多くのフローリング材はどうしても薄い板を寄せ集めそれを接着して製造されることから
構造上接着箇所に不具合を生じる場合があります
これがぶかぶかの原因の一つと考えられます
そこで本工事では耐久性と健康面を考慮して床を全て天然ヒノキ張りに変更することにいたしました
さらにはバリアフリー化として床をすべてフラットにすることにいたしました

フローリング材などのベニヤ系の素材と違いヒノキの一枚板による加工は精度が要求されるところがあるので弊社と何代にも渡ってお付き合いくださっている宮大工なども手がける大工さんに仕事を依頼しました
着工前01
着工前02
着工前03


トイレ
トイレは施主様の期待が凝縮していました
リフォーム前は階段状になった和式でした
今回のリフォームではタンクを低い位置に内蔵したタイプで低くすっきりとした印象が特徴の便器を採用しました
人感センサーによりフタが自動開閉する装置を備えLEDの照明も付いていて暗くても大丈夫といったなかなか使い勝手の良い製品でした
これは施主様が検討されてTOTOの製品に決定しました
加えて施主様の希望で天井にも人感センサー装備のダウンライトを設置させていただきました

金属質感が特徴的なシルバーのコントローラーがなんとなく近未来的な雰囲気を醸しよくある白っぽいプラスチックのものより高級感を演出してくれました

手前に見えるのがエアタオルとセンサー付きの手洗いです
便利な物ですし、これだけコンパクトなものであればどんどんと一般にも普及していくかもしれません
なにより手洗いに於いて装置に触れることがないので衛生面ではずば抜けていることには違いありません
恐ろしいノロウィルス対策にはうってつけではないでしょうか

壁面と天井には酸化チタンを含んだ素材のクロスを使用しました
その性質からたばこのヤニなど自然に付いてしまうような汚れに対しては自己修復能力や消臭効果を期待できます
まあ放っておいてもある程度はいつでも綺麗にしてくれていればありがたいといったところです

床はヒノキの板が家全体フラットに敷かれているため当然ここもそうなっているので水はね等のよけいな心配をしないように上に置き敷きのカーペットを採用しました
施主様が調べたところTOTOにもこのような商品があるということでしたが
このように全体を覆う形の物はないのだそうで
それならばと私がカーペットを完全オーダーで施工させていただきました
これにより床が複雑な形状をしていても大概の形通りに収めることが出来たわけです
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玄関
玄関は色の濃いドアに煉瓦敷きのアプローチでしたが今回全体に明るい色調に変更しました

玄関ドアはライトブラウン床は大理石タイルを敷き詰めました
壁面には天然素材の織物クロスで全体を貼りました
雲海とも海波とも思える複雑に織り上げられた味わいのあるクロスで
淡い桃色が特徴的ですが何十色もの光沢のある糸がアクセントとなり
その奥深さは秀逸で見応えのある壁面が仕上がったのではないでしょうか

これに負けないアクセントとして玄関から正面に位置する壁のみ天然のコルク材を貼りました
写真で表現できないのが残念ですがビニールクロスなどでは到底表現しようがない濃淡のあるマットなテクスチャーはとても高級感のある素材といえるのではないでしょうか

そして全体の顔となるであろう照明は施主様こだわりの一品
照明内蔵の鏡を配置したのでした
玄関を明るくするだけでなく、あか抜けた印象を与えてくれました
反対のガレージ側にある明かり取り窓にはグラスフィルムを貼りました
これは明るさを演出するためホワイトベースの柄を採用しました

天井は後のケアを考慮してビニール素材ですが一見すると砂のような風合いのものを使用しました

和室への導入口である襖は施主様の家紋である梅をあしらった更紗織りを採用しました
これにて全体に暖色系の統一感を出すことに成功したと思っています
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玄関02
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DK
床はバリアフリーを考え玄関廊下から一面でつながるヒノキ材です
天然素材に拘ったわけですがこれがなかなか粋な空間を演出してくれました

巾10cmあまりのこのヒノキ材を隙間なくびしっと敷き詰めた床の重厚感は素晴らしいの一言です
着工前のフローリング床のとき気になった歩くたび音を立てていた床が全く気にならなくなりました
良い仕事をしていただいてほんとうに大工さんには感謝です

さて
床に敷き詰められたヒノキの風合いを引き立たせることができればと
壁面には対照的な石風のビニールクロスをあしらいました
イメージはピラミッド内部っぽくです
天井にも同じくビニールクロスですが茶系をベースにした複雑な色合いの物で空間を絞めるためあえて濃い色合いを組み合わせています

通常は居住空間を広く見せる効果として色を決定する場合
床から天井に向かって色を薄くしていくというのがセオリーなのですが私はこうしてみました
仕上がるまでは施主様の心配な雰囲気が伝わり恐縮いたしましたがご満足いただけたご様子にほっといたしました
無国籍風ではありますが石素材のような硬質なすっきり感と
天然素材の暖かさみたいなものなどをを感じられたら良いなぁといったところが狙いだったのです

施主様のご要望通り洋間とキッチンを隔てていた壁も取り払い
開放感が生まれたことから家屋本来の居住空間が確保できたのではないかと思われます

システムキッチンはTOTOのもので施主様にお選びいただきました
天井からの下がり壁は消防法にて完全開口ができなかったのですが
これはこれで面白い効果が生まれたと思いますし
結果的に施主様のアイディアでキッチン側にレールに取り付けられたライティングシステムを自由に動かすことによりテーブルなどの位置関係も固定しないで済むようになりました

和室へ続く引き分かれというタイプの間仕切りふすまの表面には古来よりある日本伝統の江戸更紗という素材を使用しました
引き分かれの言葉通り、中央から二手にそれぞれが離れていくタイプのもので
二枚の重なる通常の引き違いふすまより少し洒落た感じがするものです
表面素材は手ぬぐいのような綿生地に金と染め粉で千鳥の柄が描かれています
紺地に紫の華が映えて部屋の重厚感を増してくれたようです
この更紗襖が和室への良い演出となりました

この壁面のみ洋間側にラタンのような天然素材を貼りました
細かく編み込まれた風合いで暖かみを感じられたら良いかなと思いました

そして部屋の顔とも言えるテーブルセットですが
和室が二間つづき、その奥正面に床の間と仏壇を拝することから低い視線が良いと考え
腰掛けるのではなく座卓が良いのではないかということで話し合いを持たせていただきました

素材は床のヒノキの風合いを壊すことなく、あるがままというような自然な感じにまとめるには何が良いかと考えました
全体の色のコントラストと、なによりそのものを持っていることの満足感を得られるといったところから欅(けやき)に決断しました

施主様と家具を選びに行かせていただき、希望の大きさの物をいろいろと見て回りましたがなかなか見つからなかったのですが
たまたま催行していた幕張メッセでの家具ショーに出品していたケヤキの一枚板テーブルを購入することができたことでリフォームもほぼ良い形で大詰めを迎えることが出来ました

和室の間仕切りの反対側にある明かり取りの窓には今後の楽しみを考えプロジェクトスクリーンを取り付けてみました
両側に遮光一級カーテンを組み合わせることによって、これも劇場のような演出効果を期待してみました
プロジェクトスクリーンを引いただけでも面白い効果が出ますがカーテンを閉じてもまた違う表情を見せてくれるはずです
両側の掃きだしのサッシュには和紙の風合いのあるプリーツスクリーンをあしらいました
淡い色彩なので強い明かりの時はほのかな白い色に見えますが明かりの変化で色合いを変えるので面白い効果が生まれました

着工前、二つに仕切られたお部屋の壁面はほとんどが白一色といった感じのビニールクロスで統一され
洋間側に薄桃色の絨毯、台所側にはビニール素材のクッションフロアが敷かれていましたので
もう面影は微塵も感じられないほど印象を変えました
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和室
華道の師範でいらっしゃいました先代様のご希望で
ふすまはすべて鳥の子紙の白無地を貼らせていただいておりました
既存の壁は濃いめの緑色、障子を挟んで広縁の窓際には日よけのためレースカーテンを取り付けていました

今回のリフォームでは
使用するふすまの上張り材が強靱な江戸更紗であること
周りに取り付けられていた縁の破損箇所があったこと
それからベニヤでできた戸ふすまといわれる建具も操作性の向上と軽量化のため
全部新規制作させていただくことになりました

八畳敷きの二間続きの和室は奥に床の間そして次の間となっています
広縁があり障子で仕切られていて庭を眺望できるようになっています
縁の床の間側には水屋さんがありその向かい側には観音開きの押入が設えてありました

和室を仕切る4枚の間仕切りは床の間に梅の総柄で仕上げ
続きの間には松竹梅の四枚つづいて一面となるおおきな絵画のような図案で決定しました
周り縁は黒のつや消し塗りにしました艶のある縁と違って奥深いにぶい反射が特徴です

間仕切りふすまの特徴として
四枚のうち中央の1枚はふすまを閉めたとき明かりが漏れないよう
じょうぎといわれる出っ張りが取り付けられています
通常そのじょうぎは右から二番目のふすまのみに取り付けますが
今回はそれを二番めと三番めのお互いに向かい合うように取り付けました
両面定木という方法ですが
こうすることで、ふすまに重厚な印象を持たせました
ひきては銅のやきもので止め釘は真鍮を使いました
耐久性が良いので普通に使っていただければ数十年以上の単位で持ってくれることでしょう

主役となる仏壇とその周辺は京都竹屋町の金襴織りを使用しました
ふすまの裏側はあまり見る機会はないのですが施主様の期待を考えて梅の柄の入れられた素材を使用しました
特に仏壇は四枚が開いたとき裏側全ての柄が一体になるように配置しました

蝶番金具はすべて金色の仏蝶番で取っ手は仙徳といわれる銅製を使用しました
普通の取っ手と違って前に出っ張りが見あたらず
普段は薄い短冊を二枚重ねたような形をしていますが扉を開閉するときは金具を持つと前に出っ張るのです
見た目もすっきりしていてとても粋な取っ手です

広縁の物入れももちろん梅の小紋柄を使わせていただきました
江戸更紗の風合いを楽しんでいただけたら幸いです

壁面はすべてクロスで仕上げました
床の間と仏壇の入れられるところにいろいろな種類の金を使用しました
床の間の両側には天然の杉皮を貼らせていただきました
華やかな金と杉皮のこげ茶とのコントラストにより正面を際だたせる目的でした

壁面のほとんどは天然織物クロスを使用させていただきました
竹林をイメージしたもので落ち着いて涼しげな印象を感じられれば良いなぁと思いました

水屋さんの正面にはラタン調の天然素材を使用しました
清涼感が感じられればほぼイメージ通りといったところでしょう

レースのカーテンはこの際撤去させていただき
経木スクリーンに変更いたしました
すだれなどは明らかに違う質の良い木の風合いはとても秀逸です
これにより広縁全体にすっきり感が出たことで空間が広くなったような印象が生まれたと思います
和室01
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和室廊下01
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